北朝鮮がその核物質の一部を別の国家又は国家群に移転するかも知れない危険を包括する1つの潜在的軍事選択肢は、北朝鮮に出入する船舶を臨検する北朝鮮周辺の封鎖の確立である。この選択肢は、米朝間の対話の試みの失敗に引き続き、4月中盤から後半に初めて明るみになった。
ニックネーム「Cuba Lite」は、1962年のキューバ・ミサイル危機中のキューバ隔離の類似物である。戦略は、北朝鮮が戦争行為とみなすかも知れない完全封鎖を適用するよりはむしろ、いくつかの北朝鮮船舶の選別的封鎖となろう。
情報資源は、各船舶が何を運搬しているのかを決定するために使用され、海軍艦艇は、核物質を運搬していると信じられる貨物船を停止させるために派遣される。匿名のペンタゴンの上級顧問は、2003年4月27日付のDaily Telegraphにおいて、合衆国が北朝鮮水域に出入するいかなるものも追跡する能力」を有すると語っている。
この戦略は、2002年12月9日にスカッド・ミサイルをイエメンに輸送していたアラビア半島沖の北朝鮮船舶の臨検で使用されたのと同じような戦術を使用する。Sosan号は、北朝鮮を離れたときから米情報部により追跡され、スペイン海軍により横付けされた。
2003年4月の麻薬と係わっているものと信じられる北朝鮮船舶Pongsu(又はPong Su)の王立オーストラリア海軍による強襲も、立案され得る潜在的モデルと見られている。4月16日、Pong Suの航空監視は、ハーキュリーズ及びオライオンを使用するRAAFと沿岸監視隊間の任務交替で始まった。貨物船は、Bass海峡を通って東に針路を取り、木曜日(4月17日)に北に転進し、オーストラリア沿岸に進んだ。
文民警察のランチは、阻止したが、大波のため乗船することができないでいた。警察は、ADFに連絡し、海軍は、支援を任務付与された。
HMAS Stuartは、いくつかの応急修理作業後、出港した。タスマン海において、4月19日、Stuartは、Pong
Suをレーダー上で確認し、船が北方に針路を取ったとき、水平線の視界外で追尾した。2003年4月20日早朝、HMAS Stuartは、乗船準備のため、Pong Suに無線連絡した。SAS部隊は、ヘリ
から船上にロープで降下し、RHIBを使用して乗船した。兵員は、船の調理室と食堂に30人の乗組員を監禁した。Pong Suは、Garden島
に回航され、連邦警察犯罪現場と宣言され、文民当局による捜索を受けた。船は、100lbsのヘロインを運んでいることが分かり、近くの海岸で末端価格約8千万ドルの165lbが見つかった。
エスカレーションの可能性を減少させる次のステップにおいて、合衆国は、米艦艇よりはむしろ、連合海軍により実行される乗船及び臨検も選ぶかも知れない。
2003年5月31日、G8サミット直前のスピーチにおいて、ブッシュ大統領は、米国とその同盟国が疑わしい貨物を運搬する航空機及び船舶を捜索し、違法兵器又はミサイル技術を押収することを可能にする国際協定及びパートナーシップの創設に帰着する拡散安全保障イニシアチブの樹立を宣言した。
拡散安全保障イニシアチブは、世界的拡散問題へのよりダイナミック、活動的なアプローチの必要性を反映している。これは、WMDとミサイル関連装備及び技術の船積の脅威を阻止するため、法的、外交、経済、軍事その他の幅広い手段を展開するためにその国家能力を利用する協力国のパートナーシップを想定している。
オーストラリア外務相Alexander Downerは、議会において、「輸送機及び船舶の捜索と関連国内法及び国際法の強化を含む新しい、創造的な措置」に合意したことを確認した。「・・・我々は、大量破壊兵器の材料への今後のアクセスを北朝鮮に否定し、市場へのアクセスも否定するのに重要な国々との実践的協調を模索している」と、彼は語った。
このイニシアチブを始動させるために、合衆国は、疑わしいWMD移転を中止及び停止させるその能力を拡大するために、数カ国の密接な同盟国との協力を始めた。時がたてば、合衆国は、世界のほとんどの破壊兵器をその海岸から引き離し、敵の手に届かなくするために、可能な限り広範囲にこのパートナーシップを拡張するだろう。合衆国は、大量破壊兵器の拡散を防止するだけではなく、既に保有しているか又はそれに近いならず者国家及びテロリスト・グループから当該兵器を除去するか又は後退させることを最終的に狙っている。
2003年6月4日、下院に対する証言中、武器監督・国際安全保障担当国務次官John R. Boltonは、合衆国が過去2ヶ月間、北朝鮮の核兵器プログラム用と思われるアルミニウム・チューブを押収し、仏独の連合努力が北朝鮮の化学兵器プログラム
用と思われるシアン化ナトリウムを阻止したことが、最近の阻止の成功事例だと公表した。
続く行政府からの声明は、それらが押収及び臨検に関する数少ない公表であることを示した。これらの作戦の存在を暴露しないことは、議論を最小化し、柔軟性を最大化して、米国とその同盟国を公衆の圧力から解放する。
2003年6月、日本は、北朝鮮から運行する貨客船について、その政策を変えた。約2,000人の検査官が、北朝鮮船舶万景峰-92に対する関税及び出入国違反、伝染病、及び安全規則違反の検査のために新潟港に赴いた。北朝鮮は、両国間の全旅客便を停止することで直ちに反応し、スパイ行為に関与していると信じられる未詳の船舶による来航をキャンセルした。日本の政策は、北朝鮮の輸出政策に地域関係国を巻き込むための米国の大戦略の一部のように見える。
日本の国土交通大臣扇千景は、日本の港湾にある全北朝鮮船舶を検査するつもりだと声明した。6月11日、298tの貨物船Namsan 3は、舞鶴で拘留され、カニを運んでいた178tのDaehungrason-2も、北海道の小樽港で拘留された。
この政策シフトは、合衆国がF-117、B-52、B-1B及びF-15Eを含む数十機の戦闘機及び爆撃機を韓国及びグアムから撤収し、行政府が航空打撃を追求しないことを選んだことを示唆したときに現れている。
2003年6月15日、11ヶ国が、合意に達した都市にちなんでマドリード・イニシアチブと呼ばれる拡散安全保障イニシアチブ案に合意した。マドリード・イニシアチブは、カナダ、フランス、ドイツ、イタリア、日本、オランダ、ポーランド、ポルトガル、スペイン及びオーストラリアにより支持された。イニシアチブは、化学、生物学若しくは核兵器、又はミサイル構成要素含むものと疑われる貨物を迎撃するための戦略を提案した。合衆国は、日本、韓国、及びオーストラリア
による阻止増強に加えて、地域での監視増強を公表している。
2003年6月17日、カンボジア、プノンペンでのASEAN会議において、国務長官Colin Powellは、北朝鮮の麻薬その他の違法物質
の取引が抑制されなければならないことを議論するマドリード・イニシアチブの概念を発起した。ASEAN地域フォーラムは、海事紛争と関連した問題を強調した共同声明を発表し、声明は、北朝鮮又はWMDに特に言及しなかったが、北朝鮮がイニシアチブの標的である
。
政策イニシアチブに反応して、北朝鮮は、封鎖が度を越すか、北朝鮮の主権
を侵害したと感じた場合、暴力行為と米朝間の危機のエスカレーションの恐れがあるとの声明を発表した。
2003年7月23日、USA
Todayは、合衆国が麻薬又は兵器資材を運搬しているものと疑われる北朝鮮船舶を臨検するために、日本、オーストラリア、英国、フランス、ドイツ、イタリア、ポーランド、オランダ、ブルガリア、及びスペインと合意に達していることを示唆した。
封鎖の確立又は一連の臨検その他の阻止の着手は、多数の問題を提起する。第1に、国際水域での捜索及び押収実施の合法性に係わる問題が存在する。北朝鮮は、国家に麻薬を生産せず、麻薬の輸送を防止することを要求する条約の加盟国ではない。
国防総省は、対麻薬責任を有する法執行機関と軍事要員に支援を提供する権限を与えられている。国防総省は、訓練を提供し、装備を更新し、法執行、軍事及び情報機関中の情報の収集、分析及び配布、同盟国がリアルタイム情報を通信できる指揮・統制システム並びに小インフラ
によるその支援能力により、一連の情報イニシアチブを維持している。しかしながら、これらの正当性が国際法の要求に合致するのに十分なのか否かは、明らかではない。
他の問題は、封鎖又は海上阻止の有効性に関連している。WMDを阻止する試みは、麻薬の阻止と同じくらい難しいかも知れない。米国の探知能力は確固たるものだが、いくつかの北朝鮮の船積は、封鎖を突破しそうである。
北朝鮮の包括的封鎖の実行は、多数の艦艇を必要とするだろう。6月中旬現在、合衆国は、アジア・太平洋地域に、約20隻から成る2個空母打撃群と1個上陸準備群を有した。航空母艦と上陸準備群の外、タイコンデロガ級巡洋艦×2隻、アーレイ・バーク級ミサイル駆逐艦×3隻(その内、2隻は、Flight Iであるため、ヘリ部隊を搭載していない。)、スプルーアンス級駆逐艦×2隻、及びオリバー・ハザード・ペリー級ミサイル・フリゲート艦×4隻が存在する(これは、真珠湾の艦艇を含んでいない。)。
キティホークとその打撃群の要素は、5月初めに横須賀に帰港し、それ以来、キティホークを早くとも11月頃まで利用できなくする拡張整備期間が始まっている。打撃群の残りの即応性は、ある艦艇は疑いなく係留期間が始まり、あるものはそうではないため、決定するのが難しい。
USSカール・ビンソンとその打撃群の要素は、キティホークがイラク・フリーダム作戦を支援するために配備され、修理を受けている間、確実な抑止力を保証するために現在配備されている。その配備中、カール・ビンソンは、韓国沿岸を含む太平洋の複数の地域において、作戦を実行している。南太平洋で作戦を実行するかも知れないが、その打撃群の要素は、海上阻止作戦に任務変更され得る。
封鎖は、北朝鮮の航空機にも拡がり、空港で給油中の着陸中の北朝鮮機も巻き込まれるだろう。
最終更新日:2004/03/19